~おでんデータから読解く日本 Ver.5~


あるある学1回目から4回目では、牛すじ、鶏肉の全国分布図の他、牛すじとかまぼこ、鶏肉とクジラの2つの不思議な関係をお話してきました。

5回目は、引き続きの肉シリーズ。コクのある味わいが特徴の南九州・沖縄地区のおでんに欠かせない「豚肉と豚肉を使用した種もの」について、スポットを当てたいと思います。


南九州・沖縄地方で特徴的な豚肉のおでん種


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※写真は、しょうゆやみそベースの汁で調理した後の画像です。


左は宮崎県都城市のおでんには欠かせない「なんこつ」。市内のおでん屋さんでも人気の種もので、専門店ではおでん鍋とは別の鍋でやわらかくなるまで煮ることが多いそうです。

真ん中は「あばら肉(スペアリブ)」。豚肉を麦みそや黒糖などで味付けをすることもある鹿児島風おでんに入ります。この他、鹿児島市内には、豚の角煮などで用いられる三枚肉(三枚身という名称もある)を提供するおでん屋さんもあります。

右は「豚足(テビチ)」。沖縄おでんに欠かせない種もので、食べられる部分は皮、肉、すじ、なんこつ。ご家庭で再現する時は「下ゆで済みの市販品」を使うと時短調理になります。


局地的に出現するもの・全国的に出現するもの



串に刺さったものは豚もつで、局所的に出現します。
左は、静岡市内で食されるしょうゆベースの真っ黒の汁で煮込む「しぞーかおでん」の欠かせない種もの。
右は、みそ味の豚もつは、名古屋市内の土手煮をリスペクトした紀文の「名古屋風味噌煮込みおでん」の中にも入っていますのでどうぞお試しくださいと言いたいところですが、出荷が3月2日までの秋冬限定商品でした。今年の秋冬も再販売する予定ですのでどうぞお楽しみに。

おでんの汁にコクが出てボリュームもあるということで人気の「ロールキャベツ」「ウインナー」は、ともに、おでんの世界では新顔の部類で、あるある学4回目で紹介しました「鶏団子」と同じように全国的に出現します。
ウインナーは、少々古いデータですが、2018年の調査で子供に人気のおでん種として4位にあがりました。また、2017年頃からじわりじわりと増えているイタリアおでんを供する店の中には、「サルシッチャ」をおでん種として楽しめるところもありました。
ロールキャベツも、2020年・2021年の調査で「入れてみたいおでん種」に1位にあがるなど、目が離せないアイテムです。


豚肉系おでん種 ご家庭のおでんに入れるランキング ベスト10


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では、2023年に行った「家庭でおでんを作る時に入れる種もの 47都道府県調査」のランキングの順位も、併せてご紹介しましょう。(調査概要はページの一番下に記載)

豚肉を入れる県は42県。南九州・沖縄でベスト3を占めます。東日本で10位以内に入ったのは三重県だけで、西高東低の結果となりました。

豚足を入れる県は12県。1位沖縄県(24.0%)、2位の京都府からの下の順位の県は5%以下となり、局所的な傾向が出ています。

豚もつを入れる県は10県。1位静岡県が14.3%、2位沖縄県と8.0%となり、局所的な傾向が出ています。

ウインナーを入れる県は46県で全国区のおでん種といえましょう。穏やかな西高東低傾向で沖縄県が1位となっています。

ロールキャベツを入れる県は47県でこちらも同じく、穏やかな西高東低傾向で沖縄県が2位となっています。

これらのデータから、豚肉系のおでん種は西高東低の傾向、沖縄県は5つの種ものすべてがベスト10入りしていることがわかります。


宮崎風おでん(都城風)


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ここからは紀文が再現したおでんの写真をもとに、どのようなおでんが南九州・沖縄地区で食されているかをお話します。

宮崎風おでん(都城風)は、合わせ出汁をベースに、農畜産業が盛んな都城市らしく「豚のなんこつ」「キャベツ」「もやし」が入る滋味あふれるおでんです。

このおでんには、長さが15センチ位の「おやし」と呼ばれる大豆もやしを入れることが多く、おでんの季節が到来すると市内のスーパーマーケットにも並びます。
「おやし」の他、スーパーの精肉売り場に、「スペアリブ」とは別に、「豚のなんこつ」という部位が大量に陳列してある光景をみた時は、東日本出身の筆者は驚きました。スーパーの店員さんに、骨付きでなおかつ厚い身質の「豚のなんこつ」は、圧力鍋で煮ると簡単と教えていただきました。
また、観光案内の方にも「キャベツは種ものの一番上にフタをするようにすると美味しくできますよ」と秘技もご教示いただくなど、おでん愛を十分いただいた都城訪問でした。


鹿児島風おでん


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このおでんは料理研究家の渡辺あきこさんの友人である鹿児島在住Hさんのレシピを元にしています。
Hさんは豚あばら肉(スペアリブ)と大根・こんにゃくなどを麦みそ・砂糖などで煮込んだ伝統料理である「とんこつ」をヒントに考えたそうです。

豚が名産の鹿児島風おでんは、汁のベースも豚です。豚の旨味に麦みそで味つけした甘めの汁と、種ものの大豆もやし・つけ揚げ(甘めのさつまあげ)・厚揚げが特徴的です。


沖縄風おでん


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日本最南端の沖縄でおでん?と思われる方が大勢いると思いますが、意外におでんはポピュラーなんです。

カツオと昆布のベースの汁が多く、豚足(テビチ)、青菜、昆布、さつまあげ(揚げかまぼこ)が入るのが特徴です。

この他、沖縄の豚肉好きの県民性を表す通り、ソーキやウインナーなどを供するおでん屋さんもあります。


南九州・沖縄おでんロードは豚の道


沖縄の伝統料理「琉球料理」は中国の文化の影響を受け「豚肉」中心の食文化が発展しました。琉球料理は豚肉を使った料理の種類も多いことはもちろん、使用する部位も顔、耳、血などと余すことなく使用し、このことはおでんの豚足にも見て取れます。
沖縄のおでんは、沖縄独立後位からよく食されるようになり、かつては那覇市におでん街があったほど人気で、豚の煮物料理から派生したと言わるおでん沖縄おでんは、沖縄独自の進化を遂げ、豚足をはじめ、ソーキ、ウインナーなどを入れるようになったそうです。
また、全国展開をするコンビニエンスストアのおでん売り上げでは沖縄県が上位に入る、居酒屋や定食屋でもおでんが供されるなど、おでんがポピュラーとなっています。

また、古くから養豚業が盛んであった鹿児島や宮崎についても、昔はおでんを食べる文化がそれほどなかったそうです。

しかし、戦後、復員された方が作られたおでんが発祥と言われる「都城おでん」はそのオリジナリティから全国でその名を知られるようになりました。「とんこつ」「おやし」が特に人気の種もので、おでん屋さんには行列ができること多く、お鍋を持参し出来立てのおでんを購入されるお客さまもいらっしゃるのだそう。

鹿児島のおでんは、「とんこつ」「豚の角煮」という豚肉料理文化が根底にあり、名産であるつけ揚げを入れることで、みそ味でコクのある独特のおでんが生まれました。

都城市より北に位置する鹿児島県霧島市の有名なおでん屋さんは「汁は鶏ガラスープ」ですが、「もやし」「春菊」が人気です。特筆すべきは、このおでん屋さんの暖簾に染め抜かれた上述の豚肉料理「とんこつ」の文字、おでんと並び「とんこつ」も人気があることそうです。これは沖縄のおでんの発展とは、また違った豚肉とおでんの関係なのかもしれませんね。

このように、地元の野菜などの特産品と出会い、地元の豚肉料理が進化して生まれたおでん、地元の豚肉料理と並列したおでん。これら「南九州・沖縄おでん」には豚肉で繋がる、おでんロードがあると筆者は考えます。


《調査概要》
<紀文・47都道府県 家庭の鍋料理調査2023>
■調査日程:2023年7月28日〜8月4日
■調査手法:インターネットによる回答
■調査対象:20代〜50代以上の既婚女性4,700人
■各都道府県100人(各20代25人、30代25人、40代25人、50代以上25人)
■調査機関:株式会社マーケティングアプリケーションズおよび株式会社紀文食品
※おでん種の地域分布図(日本地図)は、上記調査の回答者の内、『昨年の秋冬(2022年9月から2023年2月の間)に、「おでん」をご家庭で作って1回以上食べた方』:1,993人の集計値です。