だしの食材といえば、かつお節や昆布が一般的ですが、それだけではありません。そして、だしをとった後のかつお節などは処分してしまう方も多いはず。

「だしを頬張るおでん企画」は、肉類・魚介類・野菜からだしをとって、“だしを食材ごと食べましょう”というもので、だしとなる食材、練りもの、野菜と他1品の計4品で主役のおかずに仕立てます。

さて、vol.1のだしの食材は、「かき」。料理家・渡辺あきこさんの上品なゆば仕立ておでんと、時代小説作家・畠山さんの江戸期のかきと昭和ノスタルジーの話を紹介します。

今月の頬張るだし:かき

畠山健二 江戸期のかきの話(イラスト:ふくだのぞみ)

「江戸前」にはいろいろな意味があるが、一般的には東京湾でとれた魚介類のこと。カキに江戸前のイメージはない。でもね、江戸時代に江戸っ子たちは江戸前のカキを食べていたんです。酢牡蠣はもちろんのこと、吸い物や串焼きにしたり。東京湾はミネラルが豊富だから絶品だったのかもね。

私にとって牡蠣といえばオイスターソース。市販の麻婆豆腐の素にオイスターソースを垂らすとコクが出るんです。ぜひお試しを。

〝牡蠣〟と漢字になれば小料理屋。〝カキフライ〟となれば洋食屋。〝オイスターバー〟に名前を変えればシャレオツなオープンカフェのイメージだ。カキにはたくさんのドラマがあるってことか。そして、ついに〝おでん〟か。楽しみだなあ。ああ。食べてみたい。

そういえば映画「嵐を呼ぶ男」で石原裕次郎も歌っていたな。「オイスターはドラマ~♪」……。この低俗なギャグに「俺らはドラマーだろ!」と突っ込める人も少なくなったんだろうなあ。

かきのイラスト

おでん種としてのかき

おでん種としてかき

おでん種「かき」:平成期にブームになった「創作おでん系」の流れを組むもの。透き通った合わせ出汁や昆布出汁ベースのおでん汁を小鍋にとり、生がきを加熱して提供するおでん専門店が多い。ゆずを乗せていただくと、より冬の到来を感じさせる一品となる。

今月の4つの材料
かき、はんぺん、春菊、ゆば

かき、はんぺん、春菊、ゆば
かき、はんぺん、春菊、ゆば


かきのゆば仕立ておでん

かきのゆば仕立ておでん

材料(2人分)

作り方

  • (A):水:4カップ
  • (A):昆布:10センチ
  • かき:8粒(140g)
  • はんぺん:1枚
  • 春菊:80g
  • ゆずの皮:少々
  • 生ゆば:100g
  • 酒:大さじ1
  • 塩:少々
  1. 鍋に水4カップ、昆布を入れて弱火にかけ沸騰直前に昆布を取り出しAを作る。
  2. かきはザルに入れてふり洗いする。
  3. はんぺんはタテ半分に切り、2センチ幅に切る。春菊は長さを半分に切る。
  4. ゆずは皮の白いところをそいでせん切りにする。ゆばはざくぎりにする。
  5. 鍋に(A)、酒を入れて中火にかけて煮立て、かきを入れて煮たったらかきがふっくらするまで弱火で煮る。
  6. あくをすくい、塩少々を加え、はんぺん、春菊を入れてさっと煮る。
  7. 器に盛り付け、ゆばを入れ、汁をはり、ゆずをのせる。

かきおでんのアレンジレシピ
汁かけめし

かきのうま味がたっぷりのだし汁は、汁かけごはんや茶碗蒸しもおすすめ。汁かけごはんに生姜汁を加えれば滋味豊かな体が温まる一品に。

かきだしの汁かけごはん

プロフィール
レシピ担当:渡辺あきこ(わたなべあきこ)

料理研究家。東京都出身。和食を基本とした家庭料理のレシピを、雑誌、テレビ、自身の書籍等で発信している。 また、日本各地の郷土料理の研究をライフワークとし、料理教室や講演会等、忙しい日々の合間をぬって、各地に足を運んでいる。 伝統の知恵とともに、日本の味を伝え続けている。

プロフィール
江戸の話担当:畠山健二(はたけやまけんじ)

1957年、東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。『スプラッシュ マンション』で小説家デビュー。翌年、時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)を刊行。2024年「新本所おけら長屋」(祥伝社文庫)がスタート。シリーズ累計215万部の突破のベストセラーとなる。 その他の著書に『下町呑んだくれグルメ道』(河出文庫)、『超入門! 江戸を楽しむ古典落語』(PHP文庫)、『粋と野暮 おけら的人生』(廣済堂出版))がある。

プロフィール
イラスト担当:ふくだのぞみ

静岡県出身。イラストレーター。絵本作家。 広告、書籍、新聞、雑誌の挿絵のほか、店舗やオフィスの壁画やロゴ、パッケージイラストなどを手がける。 主な絵本作品に『いよっ!えどっこだねぇ』(原案/畠山健二 理論社)、『どっちどっちほいくえん』(こぐま社)、『おしゃれヘアーのカーリーさん』(岩崎書店) 、「こめたのみーつけたシリーズ」(旅行読売出版社)がある。撮影:Min Kyung Choi

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