だしの食材といえば、かつお節や昆布が一般的ですが、それだけではありません。そして、だしをとった後のかつお節などは処分してしまう方も多いはず。
「だしも頬張るおでん企画」は、肉類・魚介類・野菜からだしをとって、“だしを食材ごと食べましょう”というもので、だしとなる食材、練りもの、野菜と他1品の計4品で主役のおかずに仕立てます。
さて、vol.3のだしの食材は、「ほたて」。材料を薄切りにするという手法で、時短かつだし含みを良くしたという料理家・渡辺あきこさんの「春おでん」と、時代小説作家・畠山健二さんの年季の入った「貝の食し方」を紹介します。
今月の頬張るだし:ほたて
畠山健二 江戸期のほたての話(イラスト:ふくだのぞみ)
縄文人も食していたほたては、江戸時代になると、貝に味噌を垂らした漁師料理になったそう。
現代でほたてといえば刺身に炊き込みご飯、カルパッチョといろいろあるが、何といってもバター焼きだ。私の調理法は、貝を開いて酒をたらしオーブントースターへ。焼けてきたらバターと醤油を投入。さらに焦げ目がつくまで焼いて出来上がり。なんという香ばしさだ。
だが本当の目的はほたてではない。ほたてを食した後の貝に残った汁だ。これを熱々のご飯にかけて、刻み海苔。ほたてには申し訳ないが、こっちの方が美味い。ほたてに感謝はしてますよ。だって、この汁にはほたての旨味と甘味が凝縮されて溶け込んでいるのだから。おでんのだしとしても立派に通用するのがわかるってもんだ。
そういえば、北海道某所にはほたて漁で財を成した「ほたて御殿」が建ち並ぶ村があった。羨ましい。「ホッタテ小屋」じゃないんだなあ。

おでん種としてのほたて

おでんに入れると貝のうま味が良いだしとなる。比較的煮くずれしにくいが、さっと煮る程度がおいしい。しょうがみそだれをかければ青森風おでんになる。塩味のおでん汁に、稚貝の加工品「ベビーホタテ」を串に刺して入れ、食す時にバターを少しのせると美味。
今月の4つの材料
ほたて(ベビーホタテ)、焼ちくわ、じゃがいも、アスパラガス

ほたてと薄切りじゃがいものおでん

流行りの貝だしはラーメンだけではありません。
手前と奥はジャガイモとちくわの薄切りスライスして調理時間は短く。
イタリアンの魚の主菜にピッタリのメニュー。バターと黒こしょうがよく合います。
材料(2人分)
作り方
- ベビーほたて:12個
- 焼ちくわ:2本
- じゃがいも(メークイン):1個
- 酒:小さじ1
- アスパラガス:2本
- 昆布:8センチ
- 塩:少々
- 鍋に水3カップ、昆布を入れて弱火にかけ沸騰直前に昆布を取りだす。
- ちくわは5ミリ厚さの輪切りにする。
- じゃがいもは皮をむき、薄い輪切りにし熱湯で10分ゆでザルにあげる。アスパラガスは根元の皮をむき、3センチ長さ、たて半分に切る。
- 1の鍋に酒、ほたて、ちくわ、じゃがいもを入れて中火にかけて煮立ったら弱火にして5分煮る。
- 塩少々で味をととのえ、アスパラガスをいれて火をとめる。
ほたておでんのアレンジレシピ
グラタン
ほたてのうま味がたっぷりのだしを含んだじゃがいもはグラタンによく合います。
アスパラをみじん切りにしてかければより春らしいメニューに。じゃがいもとちくわは薄く切っているのでチーズ焼きにもぴったり。


プロフィール
レシピ担当:渡辺あきこ(わたなべあきこ)

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江戸の話担当:畠山健二(はたけやまけんじ)

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イラスト担当:ふくだのぞみ