だしの食材といえば、かつお節や昆布が一般的ですが、それだけではありません。そして、だしをとった後のかつお節などは処分してしまう方も多いはず。
「だしも頬張るおでん企画」は、肉類・魚介類・野菜からだしをとって、“だしを食材ごと食べましょう”というもので、だしとなる食材、練りもの、野菜と他1品の計4品で主役のおかずに仕立てます。
さて、vol.4のだしの食材は、「豚スペアリブ」。料理家・渡辺あきこさんによる台湾・排骨湯(パイクータン)風おでんと、時代小説作家・畠山健二さんによる慶喜公をはじめとした江戸期の肉食の話を紹介します。
豚スペアリブと大根を煮込んだ排骨湯は台湾家庭料理の定番。
この他、豚スペアリブを薬膳のスープで煮込んだ「肉骨茶(バクテー)」もマレーシアやシンガポールで頻繁に食されます。
排骨湯も肉骨茶も、その滋味あふれる味わいは体に優しく、なんだかほっとする味。本場では八角などの調味料を使用することが多いですが、今回はこしょうを効かせアクセントにしました。
今月の頬張るだし:豚スペアリブ
畠山健二 江戸期の豚スペアリブの話(イラスト:ふくだのぞみ)
江戸時代は獣肉を食べることがタブーとされていた。殺生はいかんってことだろう。だけど、実際は食べてたんですよ。だから、鹿肉を紅葉、馬肉を桜、猪肉を山鯨なんて言ってたわけか。落語「二番煎じ」では、番小屋で猪鍋を食べる場面があるしなあ。
豚肉をこよなく愛したのが十五代将軍、徳川慶喜だ。記述には薩摩産の豚肉がお気に入りだったそうだが、どんな豚肉料理を食べていたのかは不明。まさか、ポークチャップってことはないだろうから、やっぱり鍋なんだろうな。
じつは、私も牛肉よりは豚肉の方が好きなんです。ステーキよりはポークソテー。カツレツよりはとんかつだ。安いからじゃないですよ。特に好きなのが豚肉の脂身。だから、とんかつはロースしか食べません。
今回のおでんは、豚のスペアリブだとか。角煮用の豚肉ではないところが渋い。骨にくっついた肉をリスのように前歯で食べるのが理想だ。脂身をじっくり味わいながら。

おでん種としての豚スペアリブ

豚肉を麦みそや黒糖などで味付けする鹿児島風おでんには欠かせない。黒豚の三枚身を供するおでん専門店もある。骨つきあばら肉を大根やこんにゃくなどと煮た伝統料理「とんこつ」にヒントを得てご家庭でおでんを作る方もいる。
今月の4つの材料
豚スペアリブ、大根、揚ボール、レタス

台湾・排骨湯風 豚スペアリブだしおでん

材料(2人分)
作り方
- 豚スペアリブ:200g
- 大根:200g
- 揚ボール:1袋
- レタス:2~3枚
- 水:4カップ
- 酒:大さじ1
- 白こしょう:少々
- 塩:小さじ1
- 5の黒こしょう:たっぷり
- 豚スペアリブは熱湯で1〜2分ゆでてザルにあげて水気をきる。大根は皮をむき、タテ4つに切りそれを乱切りにする。レタスは洗って大ぶりにちぎる。
- 鍋に水、酒、白こしょう少々、スペアリブを入れて中火にかけ、沸騰したら弱火にしてアクをすくう。フタをして静かに煮立つ状態で15分煮る。
- 2に塩小さじ1、大根を入れて15分煮る。
- 揚ボールは熱湯をかけて油を抜いて3に加えて5分煮る。
- 塩味をみて、黒こしょうをたっぷりふり、レタスをくわえて火を止める。
豚スペアリブだしおでんのアレンジレシピ
<豚ほぐし肉のタマネギマリネ>
やわらかく汁の旨みがしみた豚スペアリブの身をほぐし、タマネギのマリネをのせ、皿にレタスを敷いて盛り付ける。
<タマネギのマリネ>
新タマネギ40gを薄切りにし、豚スペアリブのおでん汁を入れたマリネ液に漬ける。
<マリネ液>
塩:小さじ1/3
酢:大さじ1
砂糖:小さじ1
おでんの汁:大さじ2


プロフィール
レシピ担当:渡辺あきこ(わたなべあきこ)

プロフィール
江戸の話担当:畠山健二(はたけやまけんじ)

プロフィール
イラスト担当:ふくだのぞみ