今月の「粕おでん」は、寒いこの季節に身体の芯まで温まるように、酒粕を加えました。ほんのりと苦みのある芹(せり)と、噛みごたえのある根菜類がたっぷり入ったおでんです。
家庭料理のよいところは、決まった料理をタイミングよく提供しなければいけないプロの料理とは違い、家族の好みに合わせたものを食べごろで出すことができる点でしょう。できたての料理をすぐに味わうことは、何よりのごちそうです。贅沢な食材を使わなくても、素朴で心温まる家庭料理は、それだけで最高のおもてなしといえるでしょう。
酒粕をおでんや鍋ものに使うときは、板状のものより、練り状のものがおすすめです。やわらかく汁に溶けやすいため調理が手軽なうえ、風味も豊かです。
酒粕のおでんには、塩鮭のように身がしまって塩味のする、崩れにくい具材が向いています。
(A) | |
さつま揚6枚 | 1パック |
揚ボール | 1パック |
紀文つみれ | 4個 |
魚河岸あげ® | 1パック |
塩鮭(切り身) | 4枚 |
大根 | 1/7本(5cm) |
ごぼう | 1/2本 |
こんにゃく | 1枚 |
餅 | 4個 |
せり | 1束 |
(B) | |
水 | 2000ml |
昆布 | 15×15cm |
みそ | 160g |
練り酒粕 | 500g |
※霜降り:魚介類や肉などの下処理方法。表面が白くなる程度に熱湯に通したり、かけることにより、素材のくさみやぬめりを取り除くことができます。
寒い時には温かい料理が、暑い時には冷たい料理がご馳走に感じることがあります。旬の食材はもちろん、温度や味付けなどを変えながら、自分の身体が欲している物を食べましょう。決まった料理を決まったように出さなければならないプロの料理とは違い、家族オリジナルの逸品が味わえるとよいですね。
しんじょとは、魚に塩を加えてすり鉢ですり混ぜたもの。練りもの本来がもつ独特の粘りや弾力は、塩とすり鉢でよくすり混ぜる工程から生まれてくるものです。一方、つみれは、しんじょよりも少し魚の食感を残すようにしながら、すりつぶしています。家庭では、フードプロセッサーなどを利用して、しんじょやつみれを作ることもできますが、なめらかになりすぎてしまうことがあります。市販の練りものを利用しながら弾力の違いをお楽しみください。
日本料理は食感を重んじ、「弾力」や「歯ごたえ」なども大切な要素の一つです。また、食べものをしっかりと咀嚼することは、消化を助けることにつながります。このように、日本人は昔から噛む文化を大事にしています。
今回のおでんは、酒粕を加えたとろりとした汁に、練りものや大根とごぼうの噛みごたえのある根菜類を入れて、食感の組み合わせを楽しめるようにしました。
冬場はとくに根菜類がおいしくなる季節です。おでんにもたっぷりと入れて、食感の美味を味わいながら噛む力を養いましょう。