だしの食材といえば、かつお節や昆布が一般的ですが、それだけではありません。そして、だしをとった後のかつお節などは処分してしまう方も多いはず。

「だしも頬張るおでん企画」は、肉類・魚介類・野菜からだしをとって、“だしを食材ごと食べましょう”というもので、だしとなる食材、練りもの、野菜と他1品の計4品で主役のおかずに仕立てます。

さて、vol.8 のだしの食材は「トウモロコシ」。料理家・渡辺あきこさんがフィールドワークで出会った“トウモロコシの味噌汁”をヒントにした冷製おでんと、時代小説家・畠山健二さんによる、吉原発祥の言葉や江戸者も驚くであろうトウモロコシのおでん化を軽妙に綴ったエッセイを紹介します。

今回の冷製おでんは、トウモロコシだしで枝豆とズッキーニを煮た、黄色と緑が映える夏らしい一皿。さっぱりとしただしに、練りものの「笹かま」もよく合います。アレンジレシピでは、トウモロコシをフードプロセッサーでソースにし、パンにのせるという意外性のある一品も登場し、思わず驚かされます。

今月の頬張るだし:トウモロコシ

畠山健二 江戸期のトウモロコシの話(イラスト:ふくだのぞみ)

「とうもろこし」と聞いて連想するのは縁日だ。だが私の場合、とうもろこしが食べたいのではない。とうもろこしの露店から漂う醤油の焦げた匂いだ。この匂いには勝てない。歩きながら食べるのだが、最後は飽きてしまうのだ。

 江戸時代にもこれと同じことが行われていた。場所は吉原。不夜城と呼ばれた遊郭吉原は大勢の人で賑わったが、その大半は冷やかし。ちなみに、この〝冷やかし〟も吉原で生まれた言葉だ。浅草紙を作る職人たちは、紙切れ屑を煮た後に冷やす。紙が冷めるまで吉原をブラついて時間を潰したってわけ。それで〝冷やかし〟と呼ばれるようになったそうだ。  

 話を戻すと、江戸者たちは焼きとうもろこしを片手に吉原を冷やかしていたんだと。そんなとうもろこしがおでんになるとは江戸者たちも驚きだろうな。夏の夜の吉原での冷やかしにはスイカも重宝されたそうだ。うーん。さすがに、おでんにスイカは無理だろうな。おっと、余計なことを書いちまった。やりかねないからなあ。


おでん種としてのトウモロコシ

2021年の東京オリンピックの選手村食堂に一般公募でメニューが採用され、その中に「おでん夏バージョン」があり、トウモロコシやトマト、なす、オクラなどの夏野菜とがんもどきをさっぱりとした味に仕あげ、見た目も涼やかなものだった。ヤングコーンでも代用できそう。

今月の4つの材料
トウモロコシ、ズッキーニ、笹かま、枝豆

トウモロコシ、ズッキーニ、笹かま、枝豆

トウモロコシだしの夏野菜たっぷり冷製おでん

材料(2人分)

作り方

  • トウモロコシ:1本
  • 笹かま:4枚
  • ズッキーニ:1本
  • 枝豆(さやつき):80g

    (A)
  • 醬油:小さじ1
  • 塩:少々
  1. トウモロコシは皮をむき、ひげ根をとり3〜4センチ長さに切る。ズッキーニは2センチ長さに切る。枝豆はざるに入れて洗って産毛を取り、さやの両はしをハサミで切る。笹かまは半分に切る。
  2. 鍋に水3カップ、トウモロコシ、枝豆を入れて中火にかける。煮立ったら弱火にしフタをして5分煮る。
  3. (2)に笹かまとズッキーニを入れてフタをして2分煮る。(A)で味をつけ、あら熱が取れたら冷蔵庫で冷やす。

トウモロコシのアレンジレシピ
<コーンクリームソース フォッカッチャ添え>

トウモロコシ1/2本の実を切りはずし、煮汁1/4カップをフードプロセッサでピューレ状にし、生クリーム1/2カップ、塩、こしょう少々を加えて混ぜる。
食べやすく切ったフォッカッチャにつけて食べる。

プロフィール
レシピ担当:渡辺あきこ(わたなべあきこ)

料理研究家。東京都出身。和食を基本とした家庭料理のレシピを、雑誌、テレビ、自身の書籍等で発信している。また、日本各地の郷土料理の研究をライフワークとし、料理教室や講演会等、忙しい日々の合間をぬって、各地に足を運んでいる。伝統の知恵とともに、日本の味を伝え続けている。

プロフィール
江戸の話担当:畠山健二(はたけやまけんじ)

1957年、東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。『スプラッシュ マンション』で小説家デビュー。翌年、時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)を刊行。2024年「新本所おけら長屋」(祥伝社文庫)がスタート。シリーズ累計215万部の突破のベストセラーとなる。その他の著書に『下町呑んだくれグルメ道』(河出文庫)、『超入門! 江戸を楽しむ古典落語』(PHP文庫)、『粋と野暮 おけら的人生』(廣済堂出版))がある。

プロフィール
イラスト担当:ふくだのぞみ

静岡県出身。イラストレーター。絵本作家。広告、書籍、新聞、雑誌の挿絵のほか、店舗やオフィスの壁画やロゴ、パッケージイラストなどを手がける。主な絵本作品に『いよっ!えどっこだねぇ』(原案/畠山健二 理論社)、『どっちどっちほいくえん』(こぐま社)、『おしゃれヘアーのカーリーさん』(岩崎書店) 、「こめたのみーつけたシリーズ」(旅行読売出版社)がある。撮影:Min Kyung Choi

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