だしの食材といえば、かつお節や昆布が一般的ですが、それだけではありません。そして、だしをとった後のかつお節などは処分してしまう方も多いはず。

「だしも頬張るおでん企画」は、肉類・魚介類・野菜からだしをとって、“だしを食材ごと食べましょう”というもので、だしとなる食材、練りもの、野菜と他1品の計4品で主役のおかずに仕立てます。

さて、季節は秋。この季節の小鍋立てといえば思い浮かぶのが湯豆腐。そしてブイヤーベース。この東西の定番鍋の具である「鱈(たら)」をVol.9のテーマにしました。

好評の畠山先生の江戸期の話は、富山のタラ汁のくすっと笑えるエピソードともにご紹介します。

畠山健二 江戸期の「鱈(たら)」の話(イラスト:ふくだのぞみ)

 鱈と日本人の関りは古く、江戸時代から食べられていたそう。下処理の際、腹を切らずに口から内臓を取り出すことができたので、武家の間では縁起がよいと重宝された。鰻も武家社会の江戸では背開きだからね。


 私は職業柄、全国の書店さんを訪問するが、よく「一番美味しかったものは何ですか?」と訊かれる。真っ先に答えるのが富山で食べた「たら汁」だ。たら汁街道と呼ばれる地域には専門の食堂が並ぶ。ぶつ切にしたスケトウダラを昆布だしの鍋にぶち込み、味噌で煮込む。シンプルだけどこれが最高に美味い。白飯との相性も抜群だ。私も鱈を丸ごと買ってきて。たら汁作りに挑戦したが、何かが違う。きっと秘伝があるのだろう。地元の人に尋ねたら「鍋の大きさじゃないか」だと。そんなわけないだろ!。
今回のおでんは「鱈だし」です。鱈って淡泊なイメージがあるのだが、出汁として利用できるのだろうか。きっと、さっぱりした中にも奥深さを感じるんだろうなあ。

おでん種としてのたら

本場マルセイユのブイヤベースが地中海の岩礁魚を厳格に指定するのに対し、ご家庭で楽しむなら、たらや鯛の切り身、有頭エビがおすすめである。淡白でありながら奥深い、奥行きのある味わいが手軽に叶う。

その魅力はおでんの鍋の中でも健在だ。
市販の甘塩仕立ての真鱈を使えば、素材の豊かな旨みがスープに染み出すだけでなく、心地よい塩気がそのままお出汁全体の味付けを支えてくれる頼もしい存在となる。手間をかけずとも、奥深いプロの味わいが完成する。

今月の4つの材料
たら、トマト、セロリ、海老だんご

たら、トマト、セロリ、海老だんご

たらのブイヤベース風おでん

材料(2人分)

作り方

  • 甘塩たら:2切れ(140g)
  • 海老だんご:4個
  • ミニトマト:8個
  • セロリ:50g
  • にんにく:1片
  • サフラン:少々(8本)
  • オリーブ油:小さじ1
  • 塩:少々
  • こしょう:少々
  1. たらは骨を除き、1切れを3つに切る。
  2. ミニトマトはヘタをとる。セロリはスジをとり5センチ長さ1センチ幅の棒状に切る。にんにくはつぶす。
  3. サフランは水4カップにつけておく。
  4. 鍋にオリーブ油とにんにくを入れて弱火にかけ香りが出てきたら(3)に水を加える。たら、ミニトマト、セロリも加え、沸騰したら弱火にしアクをすくいながら5分煮る。塩、こしょう少々で味をととのえる。

たらのアレンジレシピ
<リゾット>

おでんの汁1カップとご飯100gを鍋に入れて弱火で10分煮る。 器に盛り、トマト、海老だんご(1センチ角に切る)、セロリの葉をのせる。

プロフィール
レシピ担当:渡辺あきこ(わたなべあきこ)

料理研究家。東京都出身。和食を基本とした家庭料理のレシピを、雑誌、テレビ、自身の書籍等で発信している。また、日本各地の郷土料理の研究をライフワークとし、料理教室や講演会等、忙しい日々の合間をぬって、各地に足を運んでいる。伝統の知恵とともに、日本の味を伝え続けている。

プロフィール
江戸の話担当:畠山健二(はたけやまけんじ)

1957年、東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。『スプラッシュ マンション』で小説家デビュー。翌年、時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)を刊行。2024年「新本所おけら長屋」(祥伝社文庫)がスタート。シリーズ累計215万部の突破のベストセラーとなる。その他の著書に『下町呑んだくれグルメ道』(河出文庫)、『超入門! 江戸を楽しむ古典落語』(PHP文庫)、『粋と野暮 おけら的人生』(廣済堂出版))がある。

プロフィール
イラスト担当:ふくだのぞみ

静岡県出身。イラストレーター。絵本作家。広告、書籍、新聞、雑誌の挿絵のほか、店舗やオフィスの壁画やロゴ、パッケージイラストなどを手がける。主な絵本作品に『いよっ!えどっこだねぇ』(原案/畠山健二 理論社)、『どっちどっちほいくえん』(こぐま社)、『おしゃれヘアーのカーリーさん』(岩崎書店) 、「こめたのみーつけたシリーズ」(旅行読売出版社)がある。撮影:Min Kyung Choi

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