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~おでんデータから読解く日本 Ver.6~


あるある学1回目から5回目では、牛すじ、鶏肉、豚肉の全国分布図を用い、牛すじとかまぼこ、鶏肉とクジラの不思議な関係のこと、南九州豚肉ロードのことなどをお話してきました。
1回目からご覧いただいている皆さまはお気づきになったと思いますが、西日本ではおでんに肉類を入れる方が多く種類も豊富です。この他に野菜やいも類を入れる割合も多いのが実態といえるでしょう。

6回目はこの「いも類」にスポットを当ててお話しようと思います。


おでん種としての「いも類」


ご家庭で主に食されるものは「じゃがいも」「さといも」です。おでん専門店で変わり種として供されるのが「さつまいも」「やまいも」です。


いも4種

※写真は、しょうゆベースの汁で調理した後の画像です。


じゃがいも

おでん汁がしみてほくほくとした食感が人気のおでん種。じゃがいもの話は後ほど詳しくお話します。


さといも

古くから日本料理で使われてきた食材で、京都では「海老芋(えびいも)」を供するおでん専門店もあります。六方むきにして薄口しょうゆでコトコト煮ればおもてなしおでんの出来あがり。ご家庭で下ごしらえを簡単に済ませたい時は冷凍品も便利ですね。
おでんの汁がしみて、ねっとりとした食感がじゃがいもとは違った味わいです。



さつまいも

野菜と味わうサッと煮おでん汁の素のパッケージ

野菜と味わうサッと煮おでん汁の素のパッケージ


塩味のおでん、スパイシーな味付けのエスニックおでんに合います。おすすめはスープカレーおでん。レシピはこちら

おでん専門店「銀座よしひろ」が1998年(平成10年)、おでんにトマトを入れてテレビや雑誌で話題となり、野菜おでんが人気を博しました。 これを受け紀文では、2005年(平成17年)に野菜をおいしく味わうためのおでんとして「野菜と味わうサッと煮おでん」シリーズを発売しました。この「野菜おでんの汁の素」は全国で発売され、そのパッケージにはさつまいもやブロッコリーが入ったおでんがシズルとして採用され、話題になりました。

野菜おでんシリーズのニュースリリースはこちら

紀文のおでんの歴史はこちら(2005年が該当部分です)


やまいも

多く流通するものは、円筒形の「ながいも」、扇形の「いちょういも(関東ではやまといもと呼ばれる)」。
シャリ感とほくほく感も味わえるやまいもは、じゃがいもやさといもとは違った味わいが楽しめます。

おでん汁を別鍋に分け、千切りにしたながいもを入れさっと煮てとろろ昆布をかけていただくメニューが懐石風おでん店で供されたこともあります。ながいもが火の通りが早いという特性を生かした調理法ですね。

また、冷やした合わせ出汁に塩で調味しおでん汁を作り、トマトやそのままの練りものなどを入れて、さらに冷やすと出来あがる「冷やしおでん」。このおでんには、千切りしたながいもがよく合います。これはながいもや練りものが生食が可能だからこそ可能なレシピです。火を使わないので、夏場におすすめです。


じゃがいもの入ったおでん


大阪風関東煮


大阪のおでんはハイブリッド。二種類あると考えた方が分かりやすいかもしれません。

一種類目は関東煮(かんとだきと読むことが多い)。江戸から伝わったとされる煮込みおでんが、上方で、従来のおでん(田楽)と区別するために「関東煮」と名づけられたといわれています。このかつお出汁としょうゆで調味する「関東煮」が、関西で昆布出汁と出会い独自の発展をとげたそうです。
種ものの特徴は、牛すじ、ごぼてん(ごぼう巻)、たこ。これにじゃがいもや梅焼きが入れはご当地感満載ですね。このタイプのおでんは、比較的加熱時間が長くて加熱温度が高く、牛すじなどの肉類をいれるため、おでん汁は透明度が低い、薄茶色の濁った汁のことが多いです。

もう一種類は、おでん汁が澄んだ「関西風のおでん」でおでん専門店などで供されます。ご家庭でも市販の「おでん汁の素」「白だし」や、昆布ベースの合わせ出汁と薄口しょうゆで調味し、弱火でコトコト調理する方はこのタイプに近いといえます。

上記の二つの種類は提供する店舗や年代によって呼び方も調味の方法も違っています。

この他に、中国の広東(かんとん)人が広めたのでその名がついたという説もあります。

写真は大阪風関東煮として、レシピを考案したものです。


osakafuoden

※写真は、しょうゆベースの汁で調理した後の画像です。


さといもの入ったおでん


阿蘇高森風田楽


写真はおでんの元祖である「田楽」。熊本県阿蘇高森地方で食されるものを再現しました。

麦みそ・みかんの皮・山椒などで作るさっぱりとした甘みの田楽みそが特徴。阿蘇では豆腐・こんにゃくの他、イワナや名産の鶴の子芋(さといも)などの種ものも特徴的。

<おでんのルーツと里芋>
おでんのルーツは、拍子木型に切った豆腐に竹串を打って焼いた「田楽」で、語源はこの「田楽」の女房言葉といわれています。女房言葉とは、宮中などに仕える女房が使用した隠語で、田楽に「お」をつけて丁寧にし、楽を省略して「おでん」となったようです。

この豆腐にみそを塗て焼いて作る田楽が発展して、さといもやこんにゃくが加わり、これをゆでてみそをつけて食す「焼かない煮込み田楽」が登場します。
この「焼かない田楽」をしょうゆで煮込んだのものが江戸(東京)で広まり、現在のおでんの原型となりました。


高森風おでん

 


京都風おでん


写真はおでん専門店をヒントに料理研究家渡辺あきこさんが考案した京都風おでん。

昆布と薄口しょうゆの汁で、豆腐・ひろうず・湯葉などの豆腐類、聖護院大根・海老芋などの京野菜をほんのりとした味付けに仕あげた、淡い色合いが特徴のおでん。


京都風おでん

 


家庭のおでんにじゃがいもを入れる県別ランキング 収穫量No.1の北海道は何位?


読者の方々が、北海道をイメージする食べ物といえば ラーメン、カニ、メロン、スープカレー、乳製品、じゃがバター、ジンギスカンなどでしょうか?

また、北海道はじゃがいもの収穫量が1位です。

しかし、家庭のおでんにじゃがいもを入れる県別ランキングは最下位という結果でした。


じゃがいも収穫量

農林水産省 「2022年(令和4年)都道府県別の収穫量のデータ」より


では、おでんの県別ランキングをみてみましょう。
家庭での用意率:全国平均27.3%となりました。

上位20位は、和歌山県、大阪府、兵庫県、沖縄県、奈良県、山口県、岡山県、愛媛県、滋賀県、広島県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、茨城県、香川県、石川県、群馬県、京都府、富山県となりました。

関西地方と中四国地方が上位に占め、西日本の県が16県ランクインする、西高東低の結果が出ています。


じゃがいもランキング

家庭のおでんにさといもを入れる県別ランキング 芋煮がソウルフードの山形県は何位?


読者の方々が、山形をイメージする食べ物といえば、さくらんぼ、ラ・フランス、だだ茶豆、冷やしラーメン、玉こんにゃく、そして東北の代表的な鍋料理の「芋煮」でしょうか?

また、2022年(令和4年)のさといもの家計調査年報※で金額ベース、数量ベースともに1位は山形市(山形県)でした。

しかし、家庭のおでんにさといもを入れるランキングは26位です。
※家計調査年報:「家計調査年報」は、総務省統計局が毎年発表する家計収支の統計資料


さといもランキング

総務省 「2022年(令和4年)家計調査年報」より

さといも支出額ランキング

では、おでんの県別ランキングをみてみましょう。
用意率:全国平均6.6%となりました。10.0%以上の県はランキング13位の島根県までで、じゃがいもに比べ用意率が低いです。

上位20位は、富山県、熊本県、三重県、福井県、宮崎県、新潟県、大分県、福岡県、佐賀県、山口県、石川県、岐阜県、島根県、愛知県、鳥取県、和歌山県、福島県、静岡県、高知県、徳島県となりました。

一位の富山県のさといもは、2022年10月テレビ東京系列で放送された『孤独のグルメSeason10』の富山県の居酒屋さんの回で富山おでんの種ものとして紹介されました。
富山名物「すすたけ(細いたけのこ)」北陸の冬の風物詩「カニ面」とともに、「皮付きのさといも」がフューチャーされ大変話題になりました。
19年8月、22年8月、23年7月と同様の調査を行っていますが、19年は6位、22年は7位、23年は1位と大幅ランクアップしました。
もともと北陸地方のさといも出現率は高かったものですが、メディアの影響を受け、余計、家庭での出現率が上がったと推察されます。

北陸地方と九州地方が上位を占め、西日本の県が13県ランクインする、なだらかな西高東低の結果が出ています。


令和のおでん 家庭では「じゃがいも」「さといも」は西高東低、おでん屋さんでは「じゃがいも」が全国区へ


東日本出身の筆者が、おでん屋さんめぐりを始めた30年数前に驚いたことといえば、「おでん種に肉類で3種類もあること」「じゃがいもとさといもが入っていること」などが挙げられます。一番驚いたことがあるのですが、それは次回に。

大阪へ転勤になった同期と一緒におでん屋さんを廻り、あの老舗にじゃがいもが入ってた!あの名店に海老芋が入っていて高級だったね!と、おでん屋さんのおいも探しをしたことも、いまでは懐かしい思い出です。

現在では、東日本のおでん屋さんにもじゃがいもが入る店舗も多く、じゃがいもは全国区のおでん種になりつつあるのではと筆者は考えます。


じゃがいもを入れたいけれど汁がにごるのがイヤという方へ 三つのポイント


①:じゃがいもを「だしパック」「お茶パック」に入れる(大阪在住の主婦Aさん)


あるある学3回目で、登場していただいた大阪府のAさんの話をしましょう。
嫁いだばかりの30年位前、祖母におでん作りを習っていて、クジラが入っていて驚き、祖母に聞いたところ、Aさん宅のおでんはクジラが高くなったので、クジラの代わりにだんだん鶏肉を入れるようになったという話をしていただいた方です。

Aさんはいまではすっかりおでん作りは私の仕事となりましたと微笑みながら、おでんは下ごしらえで味の良しあしが決まるんですねと秘技をご教示くださいました。
特に大事にしている下ごしらえは二つだそうです。

一つ目は牛すじの下ゆでを行いしっかりアクをとること、その牛すじを合わせ出汁でコトコト煮込むからおいしいおでん汁ができるそうです。

二つ目は本題のじゃがいも。
「お茶パック」や「だしパック」にゆでたじゃがいもを入れ、おでん汁で煮ると煮崩れしにくくなり、汁がにごらないので見た目にもキレイに仕あがるそうです。

筆者も早速、試したところ、パックの紙がクッションになってじゃがいもと他の種ものがぶつからないので、にごりにくいのかもと腑に落ちた記憶があります。「お茶パック」はLサイズがおすすめです。


じゃがいも調理

②じゃがいもは、やわらかくしてから一度冷やす(おでん専門店のマスターより)


昆布出汁を塩と日本酒で調味をする澄んだおでん汁が特徴のおでん屋さんに、「なぜ、じゃがいもが入っているのに、おでん汁がとても澄んでいるのか?」と聞いてみました。

マスターは、「ゆでるでも蒸すでもいいのですが、やわらかくしてから1回冷やさないと、煮崩れちゃうんです。冷やしてからおでん汁で煮込むのがおすすめ。家庭でも1日目のでおでんが終わったら、種ものを汁からひきあげ、冷蔵庫に入れることが大切。カレーなどのじゃがいもが煮崩れちゃうのは入れっぱなしだから。冷やすとデンプン質が変わるらしくて、あまり煮崩れないんですよ」と教えてくれました。


③「男爵」より「メークイン」(論文より)


おでんに「メークイン種」が「男爵種」より煮崩れしにくいことは以下の二つの論文にも記載があります。

●古館明洋・目黒孝司:バレイショの食物繊維含量と水煮後の硬さの関係:日本家政学会誌 Vol.51, No.4331~334(2000)

●佐藤広顕・山崎雅夫・高野克己:バレイショの加工特性と品種および比重との関係:日本食品保蔵k科学会誌VOL.31, NO.4 2005

三つのポイント覚えて、今晩、おウチおでんにじゃがいもを入れてみませんか。


次回、7回目は、「昆布と西日本のおでんまとめ」の予定です。


《調査概要》
<紀文・47都道府県 家庭の鍋料理調査2023>
■調査日程:2023年7月28日〜8月4日
■調査手法:インターネットによる回答
■調査対象:20代〜50代以上の既婚女性4,700人
■各都道府県100人(各20代25人、30代25人、40代25人、50代以上25人)
■調査機関:株式会社マーケティングアプリケーションズおよび株式会社紀文食品
※おでん種の地域分布図(日本地図)は、上記調査の回答者の内、『昨年の秋冬(2022年9月から2023年2月の間)に、「おでん」をご家庭で作って1回以上食べた方』:1,993人の集計値です。


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