vol.11のおでん種 は「ロールキャベツ」。
さて、「めぐみ食堂」というおでん屋が舞台の小説『婚活食堂』の作者である山口恵以子さんは、めぐみ食堂のメニューからどの肴とお酒を合わせるのでしょうか。
今週のおでん種「ロールキャベツ」
ひき肉をキャベツで巻き、かんぴょうやベーコンなどで巻いたもので食べごたえがある。ロールキャベツを作る時に出るキャベツの芯などを刻んで餅巾着に入れれば福岡風のおでん種のできあがり。和風のおでん汁には白菜を代用してもおいしい。
おでん種 「ロールキャベツ」に合う肴
<擂りおろし蓮根のスープ>
材料(2人分)
- 蓮根・・・200g
- 乾燥キクラゲ・・・3g
- 雑穀米・・・15g
- 生姜・・・2片
- 塩・胡椒・・・適量
【A】 - 顆粒状鶏ガラスープ・・・大匙1
- 水・・・500cc
- 薄口醬油・・・小匙1
作り方
- 蓮根は皮を剥き、4分の1はイチョウ切りにし、残りは擂りおろす。
- キクラゲはぬるま湯に浸して戻し、食べやすい大きさに切る。
- 生姜は皮を剥いて1片は擂りおろし、1片は千切りにする。
- 鍋に【A】を入れて混ぜ合わせ、イチョウ切りにした蓮根と雑穀米を入れて蓋をし、火にかける。煮立ったらアクを取り除き、キクラゲを加え、雑穀米に火が通るまで弱火で煮る。
- 擂りおろした蓮根と生姜を加え、とろみがつくまで2~3分煮て、塩・胡椒で味を調える。
- 器に盛って千切り生姜をトッピングする。
- 擂りおろした蓮根の自然なとろみと、ふわりと香る生姜の風味が食欲をそそります。胃に優しい、温まるスープです。
ペアリング
「ロールキャベツ」
「擂りおろし蓮根のスープ」には
純米吟醸『旭菊大地』・ぬる燗(旭菊酒造)
【作家コメント】『旭菊大地』純米吟醸は程よい熟成感と飲み心地の良さで、料理を引き立てる酒。
このおかずが掲載している箇所
『婚活食堂』第6巻
擂りおろし蓮根の自然なとろみがついたスープは、シメにピッタリの優しい味だ。雑穀米が入っているので食べ応えもある。具材にキクラゲを入れて歯応えを出し、刻み生姜の香りが食欲を誘う。
婚活食堂と山口恵以子さんについて
『婚活食堂』
女将の恵が一人で切り盛りするおでん屋、東京・四谷の「めぐみ食堂」を舞台とした連作短編集。元・人気占い師の恵は、ある事情があって今は“見る力”を失っていたが、結婚のさまざまな悩みを抱える常連客と接するうちに、“男女の縁”が見えるようになって——。ときにほろ苦くも心あたたまるハートフルストーリー。2024年5月現在、PHP文芸文庫から11巻まで刊行中(シリーズ累計35万部)。
PHP研究所『婚活食堂』ページはこちら
※『食と酒シリーズ』(『婚活食堂』『食堂のおばちゃん』『ゆうれい居酒屋』)では100万部を超える。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)
脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年『邪剣始末』で作家デビュー。2013年『月下上海』で第20回松本清張賞受賞。近著に『めしのせ食堂: こころとお腹を満たす物語と「ご飯のおとも」』『ライト・スタッフ』『バナナケーキの幸福 アカナナ洋菓子店のほろ苦レシピ』 などがある。
料理:田村有希、奥津真実/撮影:岩下秀徳/書籍装丁:大岡喜直(next door design)/書籍装画:pon-marsh/協力:PHP研究所
~おでんデータから読解く日本 Ver.5~
あるある学1回目から4回目では、牛すじ、鶏肉の全国分布図の他、牛すじとかまぼこ、鶏肉とクジラの2つの不思議な関係をお話してきました。
5回目は、引き続きの肉シリーズ。コクのある味わいが特徴の南九州・沖縄地区のおでんに欠かせない「豚肉と豚肉を使用した種もの」について、スポットを当てたいと思います。
南九州・沖縄地方で特徴的な豚肉のおでん種
左は宮崎県都城市のおでんには欠かせない「なんこつ」。市内のおでん屋さんでも人気の種もので、専門店ではおでん鍋とは別の鍋でやわらかくなるまで煮ることが多いそうです。
真ん中は「あばら肉(スペアリブ)」。豚肉を麦みそや黒糖などで味付けをすることもある鹿児島風おでんに入ります。この他、鹿児島市内には、豚の角煮などで用いられる三枚肉(三枚身という名称もある)を提供するおでん屋さんもあります。
右は「豚足(テビチ)」。沖縄おでんに欠かせない種もので、食べられる部分は皮、肉、すじ、なんこつ。ご家庭で再現する時は「下ゆで済みの市販品」を使うと時短調理になります。
局地的に出現するもの・全国的に出現するもの
串に刺さったものは豚もつで、局所的に出現します。
左は、静岡市内で食されるしょうゆベースの真っ黒の汁で煮込む「しぞーかおでん」の欠かせない種もの。
右は、みそ味の豚もつは、名古屋市内の土手煮をリスペクトした紀文の「名古屋風味噌煮込みおでん」の中にも入っていますのでどうぞお試しくださいと言いたいところですが、出荷が3月2日までの秋冬限定商品でした。今年の秋冬も再販売する予定ですのでどうぞお楽しみに。
おでんの汁にコクが出てボリュームもあるということで人気の「ロールキャベツ」「ウインナー」は、ともに、おでんの世界では新顔の部類で、あるある学4回目で紹介しました「鶏団子」と同じように全国的に出現します。
ウインナーは、少々古いデータですが、2018年の調査で子供に人気のおでん種として4位にあがりました。また、2017年頃からじわりじわりと増えているイタリアおでんを供する店の中には、「サルシッチャ」をおでん種として楽しめるところもありました。
ロールキャベツも、2020年・2021年の調査で「入れてみたいおでん種」に1位にあがるなど、目が離せないアイテムです。
豚肉系おでん種 ご家庭のおでんに入れるランキング ベスト10
では、2023年に行った「家庭でおでんを作る時に入れる種もの 47都道府県調査」のランキングの順位も、併せてご紹介しましょう。(調査概要はページの一番下に記載)
豚肉を入れる県は42県。南九州・沖縄でベスト3を占めます。東日本で10位以内に入ったのは三重県だけで、西高東低の結果となりました。
豚足を入れる県は12県。1位沖縄県(24.0%)、2位の京都府からの下の順位の県は5%以下となり、局所的な傾向が出ています。
豚もつを入れる県は10県。1位静岡県が14.3%、2位沖縄県と8.0%となり、局所的な傾向が出ています。
ウインナーを入れる県は46県で全国区のおでん種といえましょう。穏やかな西高東低傾向で沖縄県が1位となっています。
ロールキャベツを入れる県は47県でこちらも同じく、穏やかな西高東低傾向で沖縄県が2位となっています。
これらのデータから、豚肉系のおでん種は西高東低の傾向、沖縄県は5つの種ものすべてがベスト10入りしていることがわかります。
宮崎風おでん(都城風)
ここからは紀文が再現したおでんの写真をもとに、どのようなおでんが南九州・沖縄地区で食されているかをお話します。
宮崎風おでん(都城風)は、合わせ出汁をベースに、農畜産業が盛んな都城市らしく「豚のなんこつ」「キャベツ」「もやし」が入る滋味あふれるおでんです。
このおでんには、長さが15センチ位の「おやし」と呼ばれる大豆もやしを入れることが多く、おでんの季節が到来すると市内のスーパーマーケットにも並びます。
「おやし」の他、スーパーの精肉売り場に、「スペアリブ」とは別に、「豚のなんこつ」という部位が大量に陳列してある光景をみた時は、東日本出身の筆者は驚きました。スーパーの店員さんに、骨付きでなおかつ厚い身質の「豚のなんこつ」は、圧力鍋で煮ると簡単と教えていただきました。
また、観光案内の方にも「キャベツは種ものの一番上にフタをするようにすると美味しくできますよ」と秘技もご教示いただくなど、おでん愛を十分いただいた都城訪問でした。
鹿児島風おでん
このおでんは料理研究家の渡辺あきこさんの友人である鹿児島在住Hさんのレシピを元にしています。
Hさんは豚あばら肉(スペアリブ)と大根・こんにゃくなどを麦みそ・砂糖などで煮込んだ伝統料理である「とんこつ」をヒントに考えたそうです。
豚が名産の鹿児島風おでんは、汁のベースも豚です。豚の旨味に麦みそで味つけした甘めの汁と、種ものの大豆もやし・つけ揚げ(甘めのさつまあげ)・厚揚げが特徴的です。
沖縄風おでん
日本最南端の沖縄でおでん?と思われる方が大勢いると思いますが、意外におでんはポピュラーなんです。
カツオと昆布のベースの汁が多く、豚足(テビチ)、青菜、昆布、さつまあげ(揚げかまぼこ)が入るのが特徴です。
この他、沖縄の豚肉好きの県民性を表す通り、ソーキやウインナーなどを供するおでん屋さんもあります。
南九州・沖縄おでんロードは豚の道
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