~おでんデータから読み解く日本  Ver.10~


あるある学1回目から8回目は、西日本のおでんにフォーカスし、豚肉やクジラの話、和食と昆布の話、東西の鍋料理とおでんの関係性などを紹介してきました。

9回目からは、東日本にフォーカスする場所を移し、愛知県と岐阜県の味噌とおでんの関係を紹介しました。

そして前回、静岡県は練りものの種類が多く、県庁所在地の静岡市を中心に、串に刺さった種ものが黒いおでんの汁で煮こまれた「静岡おでん(しぞーかおでん)」が食されていることをお話ししました。

今回は、この連載用に本年4月に特別調査も実施しましたので、そのデータから県民の皆さまのおでん事情を紹介できればと思います。

なお、前回同様、静岡県内の各地域で食されているおでんを指す時は「おでん」、静岡市内で主に食される黒い汁で豚もつや黒はんぺんなどを煮るおでんを「静岡おでん(しぞーかおでん)」と呼ぶことにします。


前回のおさらい


静岡県は、4つの一級河川などで経済や交流が遮断、分岐をし多くの食文化が生まれたこと、区分として西部・中部・東部の地方に分かれること、おでん協会による「静岡おでん(しぞーか)おでん」の特徴などを紹介しました。

前回の連載はこちら


静岡県の3つの区分


2つのアンケートから見る「静岡県のおでんの実態」


アンケートは「47都道府県の主婦の対象 家庭のおでん調査」と「静岡県限定 外食・購入・家庭のおでん調査」の2つとなります。


調査1:47都道府県調査:「家庭」でよく入れるおでん種:静岡県と全国平均のランキングとの比較


まずは、「47都道府県の主婦の対象 家庭のおでん調査」から。
こちらは1回から9回までのあるある学で紹介中の調査です。

下記の2つの表のうち、上の表が全国のベスト25と、同調査から静岡県のデータを抽出したベスト25の結果です。

静岡県のデータを見てみると、皆さんご存じのおでん種が上位にランキングしており、全国のランキングとあまり変わりません。
また、前回ご紹介した「おでん専門店で供される静岡おでん(しぞーかおでん)の種もの」は、「家庭のおでん」ではほとんど入らないこともよくわかります。14位に黒はんぺん、25位に豚もつがランクインする程度です。

※1:調査概要はページの一番下に記載




調査2:静岡県民の方に24年4月に特別調査: 「自宅・購入・外食のそれぞれのおでん」

県内全域の「おでん」について詳細を把握するため、24年4月にアンケートを実施しました。
※1:調査概要はページの一番下に記載

調査の方法など


●対象:上記の全国調査とは異なり、対象を主婦だけに絞らず、会社帰りに外食をする機会が多いと想定される男性もアンケートの対象に追加しました。

●イメージする期間:コロナ禍の期間中は、外食の頻度、及び支出金額も減少したことを鑑み、その影響を受けない期間も設定することとし、イメージする期間を「2015年から2024年の10年間で食べたおでん」について伺いました。
(通常のおでんの調査は、おでんシーズンである秋冬期の6か月間を調査します)

●食べるシーン:「家庭のおでん(調理済みのおでんを温めるだけの場合は除く)」「購入して自宅で食べるおでん(外食店のテイクアウトを含む)」「外食のおでん」の3つについて伺いました。

●アンケートの内容は4つの質問で構成しました。 
質問1:「一般的なおでん」か「静岡おでん(しぞーかおでん)」か?
その内容:「静岡県の東部、西部や全国的に一般的と言われるタイプのおでん」=以下写真のAタイプと、「静岡おでん(しぞーかおでん)」=以下写真Bタイプの2つ画像と画像の説明だけをご覧いただき、ご自身が食べたイメージが近い方を選択するというもの

質問2:「おでんにかける調味料」
その内容:複数の調味料から一番使用する調味料を1点選択するというもの

質問3:「おでん種に串が刺さっている比率」
その内容:おでん種が串に刺さっている比率を1点選択するというもの

質問4:「食べたことのあるおでん種」
前回紹介した「静岡おでん(しぞーかおでん)」に入る珍しいおでん種のうち、食べたことのある種ものすべてを選択するというもの


Aタイプ


「静岡おでん(しぞーかおでん)」か、そうではないか?



シーン別では「外食」で「静岡おでん(しぞーかおでん)」タイプを選択する方が多い結果となりました。

地方別では、3つのシーンのいずれも「静岡おでん(しぞーかおでん)」の聖地である静岡市がある中部で高い結果が出ました。

前回紹介しました「静岡おでん(しぞーかおでん)」専門店のご主人のお話の通り、家庭で作ることが難しい「静岡おでん(しぞーかおでん)」。
しかし、3つの地方の家庭のおでんで、「静岡おでん(しぞーかおでん)」タイプの回答があがったのは、レトルトおでんを始めとする調理済食品の「静岡おでん(しぞーかおでん)」におでん種を足して調理し食べた方のカウントであろうと推測されます。

社会的背景として考えられるのは、2000年代に入ると、ご当地おでんのレトルトおでんを販売するメーカーが増えたことも関与していると推測されます。
紀文も、2005年に青森風おでん(発売当初は商品名は「さっぱり味噌おでん」)、2007年に名古屋風おでん、2009年に静岡風おでんを発売しました。
2009年「紀文 静岡風おでん」のニュースリリーズはこちら。


専門店の「静岡おでん(しぞーかおでん)」


外食で 辛子派は56.7% NO辛子派は33.3%



「辛子のみ」「削り節のみ」「青のりのみ」「削り節と青のりを混ぜたもの」「味噌のみ」「味噌の後、削り節」「味噌の後、青のり」「味噌の後、削り節と青のりを混ぜたもの」の8つの選択肢のうちで一番多い食べ方を1つ選択していただきました。

外食では、「辛子のみ」の辛子派は55.7%、「削り節」「青のり」「削り節と青のり」「味噌」「味噌後、削り節」「味噌後、青のり」「味噌後、削り節と青のりを混ぜたもの」を合算したNO辛子派は33.3%となりました。


「静岡おでん(しぞーかおでん)」型 - だし粉と青のりをかける割合は?


結果、辛子以外の数字も高く、「家庭」「購入」「外食」と様ざまシーンで味噌やだし粉をかけて食べているのがわかります。

外食では、「削り節と青のりを混ぜたものをかける」が2位にランクインしており、「静岡おでん(しぞーかおでん)」の喫食体験であろうと推測できます。


外食おでんの「75%」以上が串に刺さっている


皆さんが、コンビニエンスストアのおでんコーナーやおでん屋さんで、串に刺さっているおでん種で思い浮かぶのは、牛すじ位でしょうか。

実際に、おでん屋さん巡りをしていて、東京でも大阪でも、一つ一つの具材が小さい「銀杏」「牛すじ」、高級感の出るよう盛り付けた「たこ」など思い浮かびますが、他の種ものにはあまり串が刺さっていないことが多いです。

しかし、静岡県の外食おでんの「75%」以上が串に刺さっていたとの結果が出ました。
数字をみていくと、中部の方だけはなく、西部・東部の方のスコアもみられるので、これも「静岡おでん(しぞーかおでん)」の喫食体験であろうと推測できます。


「静岡おでん(しぞーかおでん)」に入る珍しいおでん種



上の写真のような、おでん種が実際に食されているか聞いたところ以下のような結果になりました。



上記の棒グラフの通り、外食では、1位の黒はんぺん(61.2%)、さんかく、豚のもつと続き、かつおの心臓(ヘソ)も6%の方が喫食したと答えています。


前回と今回から:静岡県のおでんのまとめ


静岡県のおでんのうち、「購入し自宅で食べるおでん」と「自宅で作って食べるおでん」は、西部・中部・東部ともに「静岡おでん(しぞーかおでん)」の影響を受けながらも、まだまだ一般的なおでんが多いことがわかりました。
これとは逆に、「外食のおでん」は、中部で「静岡おでん(しぞーかおでん)」の比率は高いのはもちろんのこと、西部と東部ともに「静岡おでん(しぞーかおでん)」の影響を受け、徐々に変化していることがわかりました。

《調査概要》
<紀文・47都道府県 家庭の鍋料理調査2023>
■調査日程:2023年7月28日〜8月4日
■調査手法:インターネットによる回答
■調査対象:20代〜50代以上の既婚女性4,700人
■各都道府県100人(各20代25人、30代25人、40代25人、50代以上25人)
■調査機関:株式会社マーケティングアプリケーションズおよび株式会社紀文食品
※おでん種の地域分布図(日本地図)は、上記調査の回答者の内、『昨年の秋冬(2022年9月から2023年2月の間)に、「おでん」をご家庭で作って1回以上食べた方』:1,993人の集計値です。

<静岡県のおでんについて>
■調査日程:2024年4月8日から~4月13日
■調査手法:インターネットによる回答
■居住地:静岡県
■調査対象:30歳以上 70歳以下の男女
■調査人数:300人
■調査機関:アイブリッジ株式会社および株式会社紀文食品
※各グラフの数値は、「おでんは食べない」「その他」を選んだ方を除いた集計値をもとに作成しました。