~おでんデータから読解く日本 Ver.2~

あるある学1回目は、中四国、九州のおでんにかまぼこが多く入れられる理由として、調理時間の長さが関係し、その背景には西日本で人気の「牛すじ」に味をしみこませることが要因の一つであるだろうということを紹介しました。

2回目は、この「牛すじ」について紹介したいと思います。

おでん業界では、周知の事実なのですが、おでんの種ものには、2種類の「すじ」があるってご存じでしたか?

東は魚のすじ 西は肉のすじ

下の写真の左は「昔ながらの東京風おでん」を、右は「福岡風おでん」を再現したものです。

東京風おでんの赤い破線で囲んだものが魚の「すじ」、福岡風おでんの赤い破線で囲んだものが牛肉の「すじ(画像はメンブレン部分です)」です。


東京・大阪おでん

魚のすじは、東京を中心とした老舗おでん専門店などでよく提供される種もの。

白くて四角い形の浮きはんぺんの原料であるサメのすり身を取った後の「筋」などを利用して作る通好みの練りものです。歌舞伎の掛け声にもでてきます。魚のすじの話はこのくらいにし
て、、、

牛肉のおでん種

さて、今回の主役の牛すじ。

まずは、主な牛肉の種ものを4つ紹介します。

写真は左から「すじ肉(赤身)」「メンブレン及びその付近(通称:牛すじ)」「アキレス」「タン」です。

この他、静岡で食される「フワ(肺)」などがあります。このフワは静岡競輪場でも販売していて、フワの独特な食感を求めて、お持ち帰り用を購入するためだけに競輪場に来場される方もいるそうです。


牛すじ4種

※写真は、しょうゆベースの汁で調理した後の画像です。

写真の4つの種もの違いの特徴は以下の通りで、どれも捨てがたい味わいです。

「すじ肉」は、おでんの他、カレーなど煮込み料理に適し、牛の旨みのある出汁がよく出ます。生肉から調理する場合はアクが多く出るのでよく下ゆで処理をするとおいしくできあがります。

「メンブレン」は、牛肉のハラミについている筋で、串を刺した状態で販売されてることが多いです。モツのように弾力とかみごたえありますが、モツ特有のクセなどが少なく食べやすいです。

「アキレス」は、無味で出汁をよく吸います。よく煮込んだ後の、やわらかいのに弾力に富んだゼラチン質独特の食感にはまる人も多いです。

「タン」は、おでん専門店の花形メニューで、牛タン専門店でも「牛タン屋のおでん」として供されたこともあります。厚切りを使用する店舗、薄切りを使用する店舗と様ざまです。

コンビニエンスストアのおでんの普及で、いまでこそ、牛すじも全国区の地名度になりましたが、もともとは西日本で多く食されていた種ものです。

東日本の方は、スーパーマーケットのおでん種売り場にメンブレンを串に刺したものが販売されているのでそちらの方が親しみやすいかもしれませんね。

牛すじ愛があふれるおでん

下の写真は広島県呉市の惣菜店に伝わるおでんを再現したものです。 惣菜店のオーナーの祖父は、戦後すぐから呉市内でおでん屋を営んでいた※そうで、そのおでんには「すじ肉」と「アキレス」が入っていたそうです。その味を受け継いだ孫である惣菜店オーナーは、来客がある、親族が集まるなど気合を入れたイベント時のおでんには、「すじ肉」と「アキレス」を入れるとお話されていました。

「最近はそのようなイベントも減りすじ肉だけが入ることが多くなってきましたが、すじ肉はお気に入りの肉屋さんで購入して、朝からゆでこぼしなどをしておでんの下準備をしていると、なんだかほっこりくるんですよね。」と、並々ならぬ牛すじ愛もご披露いただきました。
(※現在は閉店)


呉市の牛すじおでん再現

惣菜店オーナーの子供の頃の秋祭りのおでんを再現。おでんとチラシ寿司が秋祭りの定番メニューだったそう。

東日本出身であまり牛すじに接点のなかった筆者は、30年以上も前、関西のデパートの中の肉店で、「おでん用牛肉」と書いたpopの張り紙に併せて、冷ケースの中にすじ肉が2種類、うず高く積まれていた光景に衝撃を受けたことが思いだされます。

全国 家庭のおでんの中の牛すじ分布

以下は「家庭でよく入れるおでん種の都道府県別調査」の内、「すじ肉とメンブレンの主に2つの部位の総称である牛すじ」の分布図です。1位から20位まで山口県、島根県、岡山県、和歌山県、愛媛県、鳥取県、香川県、大分県、熊本県、佐賀県、福岡県、広島県、徳島県、大阪府、奈良県、滋賀県、福井県、兵庫県、長崎県、高知県と西日本の県が並びました。

21位が京都府で京都と食文化が近いと22位が石川県、23位が富山県と東日本の県がやっと登場します。


牛すじランキング

次回も、引きつづき、「西日本のおでんと畜肉の種ものの関係」を紹介する予定です。

《調査概要》
<紀文・47都道府県 家庭の鍋料理調査2023>
■調査日程:2023年7月28日〜8月4日
■調査手法:インターネットによる回答
■調査対象:20代〜50代以上の既婚女性4,700人
■各都道府県100人(各20代25人、30代25人、40代25人、50代以上25人)
■調査機関:株式会社マーケティングアプリケーションズおよび株式会社紀文食品
※おでん種の地域分布図(日本地図)は、上記調査の回答者の内、『昨年の秋冬(2022年9月から2023年2月の間)に、「おでん」をご家庭で作って1回以上食べた方』:1,993人の集計値です。


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